豊胸シリコンは一生もの?医師が語るデメリットと回避法
UPDATE
シリコンバッグ豊胸は、豊胸術の中でも長期的な効果が期待できる選択肢として人気です。ただし挿入する豊胸シリコンが人工物である以上、寿命があります。
本記事では、豊胸シリコンの耐久性とデメリットに焦点を当て、デメリットの回避法や最も注意すべきポイントなどについて医師が解説します。豊胸を検討している方や、既にシリコンバッグの豊胸術を受けた方にも役立つ情報を、豊胸専門クリニックの医師がご提供します。
豊胸シリコンとは?
シリコンバッグ豊胸とは、乳房内にシリコン製のインプラントを挿入し、バストを大きくする美容手術です。大きさや形、柔らかさなどの種類が豊富で、脂肪豊胸やヒアルロン酸豊胸などの注入施術に比べ、一度の手術で大幅なサイズアップが叶うことが最大のメリットになります。
挿入する豊胸シリコンの安全性については、多くの研究によって確認されており、素材も改良や技術の進化により耐久性や機能性が向上しています。
当院では現在、モティバエルゴノミクス2を採用しています。実際に豊胸シリコンの種類でどれだけ違うのか、実物を紹介している動画も参考にご覧ください。
シリコン豊胸のデメリットと当院の回避法
どんなに改良が進んでいるとは言え、シリコンバッグ豊胸にデメリットがないわけではありません。メリットと同時に、どんなデメリットがあるかも正しく理解しておくことが大切です。
シリコンバッグ豊胸の主なデメリットとしては、傷跡、硬さ、動きの不自然さ、形の不自然さなどがあげられます。どれも豊胸がバレるポイントなので、気にされている方も多いのではないでしょうか。
これらに対し、当院がどのような工夫を行っているかも併せてご紹介します。
傷跡が残る
豊胸手術では、シリコンバッグを挿入するために3~4cmほど切開する必要があります。切開場所は傷が目立ちにくい脇の下か乳房下になりますが、手術方法や術後のケアにおいて、大きな傷が残らないよう十分に配慮することが大切です。
<当院が行っている工夫や配慮>
まず、ケラーファンネルという豊胸シリコンのスムーズな挿入を補助する器具を必ず使用し、傷口への負担を最小限に抑えます。実際、ケラーファンネルの使用で、未使用時より傷の大きさが1cm小さかったという報告があります[1]。また、真皮をしっかり密着させて吸収性の糸で縫う真皮縫合で傷を閉じます。表皮を緩く縫うことができるので、縫い目が残りにくいというメリットがあります。
そして傷跡をきれいに治すには、術後のケアが重要です。保護テープは紫外線や乾燥予防、軟膏は傷の治りを早めたり色みを薄くするものなど、こだわりのものを処方し、使用方法についても詳しくレクチャーいたします。
触ったときに硬い
豊胸シリコンの場合、本来のバストや脂肪豊胸に比べ、触ると硬いと感じる場合があります。もちろん、豊胸シリコンは触感についても改良が重ねられ、10年ほど前のものと比べるととても柔らかくなっています。ただ、外膜の耐久性をおろそかにはできないため、自然な胸の感触とまったく同じにすることはとても困難なのです。特に、胸の脂肪がもともと少ない方や、皮膚の薄い方は、シリコンの硬さを感じやすくなる傾向があります。
<当院が行っている工夫や配慮>
硬さの感じ方は豊胸シリコンの種類や挿入方法によって変わってきます。まず当院では、触り心地にもこだわって開発された「モティバ」を採用しています。挿入方法はバストの形や動きにも影響するため、ゲストの元々のバストやご希望を考慮し、ベストな方法をご提案しています。
また、当院はハイブリッド豊胸を得意としており、皮下に脂肪を注入することで豊胸シリコンのみの挿入よりも自然な触感をご期待いただけます。
胸の動きが不自然
豊胸シリコンを挿入したバストでは、自然な胸と異なる動きになることがあります。これは、豊胸シリコンが胸の筋肉や組織と完全に一体化しないためです。豊胸シリコンの種類やサイズによっては、仰向けに寝そべるとバストが流れないといったことがあります。
また、大胸筋下への挿入は、胸に力を入れた際に大胸筋に引っ張られて豊胸シリコンが上にあがってしまいます。
<当院が行っている工夫や配慮>
当院では、カウンセリングの際にきちんとシミュレーションして、適したサイズや形の豊胸シリコンをご提案いたします。
また、ゲストのご希望は大前提ですが、自然な動きになるよう乳腺下法を選択肢、滑らかな形や柔らかい触感は脂肪注入の併用(ハイブリッド豊胸)でカバーすることがほとんどです。実際に大胸筋下から乳腺下に入れ替えられた当院のゲストも「寝たら流れる、起きたらハリがある」と感想を述べられています。
形や位置が不自然になることがある
豊胸シリコンがよれて胸の形がいびつになることがあります。原因には、豊胸シリコンの表面がツルツルのスムースタイプで起こりやすいトラブルですが、挿入スペースに対してバッグのサイズが大きすぎることも原因になります。
また、位置に関してはドクターのセンスや経験が左右されます。立位でのデザインや、挿入直後から豊胸シリコンの位置や硬さが変化するDrop&Fluff(ドロップアンドフラッフ)をきちんと計算していないと仕上がりは不自然になってしまうのです。
<当院が行っている工夫や配慮>
当院で採用している豊胸シリコンは、表面がザラザラしたテクスチャードタイプで、充填率が高くよれにくいモティバです。
また、カウンセリングでは最新のシミュレーションソフト「Body Visualizer」を用い、仕上がりイメージを可視化します。適切なサイズや手術方針を具体的に検討することができ、大きなバッグを選ぶ際にはリスク回避のアラートにもなります。
一生ものをはばむ豊胸シリコン最大のデメリットは「寿命」
豊胸シリコンのデメリットは、綿密なカウンセリングや医師の技術によって可能性の低減に努めることができます。ただ、準備や技術でどうにもならないデメリットがあります。豊胸シリコンの寿命です。
豊胸シリコンの寿命は10年が目安
豊胸シリコンは時間の経過とともに劣化や他のトラブルが生じる影響から、破損のリスクを完全に回避することはできません。ただ、耐久性に優れた医療用の素材で作られていることもあり、豊胸後に数年では破損するということは稀です。海外の研究では10年間ほどの安全性を認める報告が複数あり[2][3]、寿命は約10年ほどと考えられています。実際、他院で受けたシリコンバッグ豊胸のトラブル相談で来院されるゲストも、10年前後の方が多いです。
豊胸シリコンの入れ替えは必須ではない
「じゃあ豊胸シリコンは、10年したら必ず入れ替え手術をした方がいいの?」と思われるかもしれませんが、そうではありません。
何も問題がなければ、豊胸シリコンの挿入から10年経っていても、入れ替えなくて大丈夫です。手術はリスクが伴いますから、少ない回数であることに越したことはありません。特に近年開発されている豊胸シリコンは、ひと昔前のものと比べて耐久性が格段に向上しており、10年以上経過しても破損しない可能性は大いにあります。
ただし、破損していないか、破損につながるトラブルが起きていないかは、エコー検査で正しく判断することが重要です。
豊胸シリコンの入れ替えが必要なケース
定期的な入れ替えは必須ではなりませんが、破損・カプセル拘縮・リップリングが起こった場合、10年経っていなくても速やかに入れ替え手術を行う必要があります。豊胸手術を受ける際には、このような将来的なリスクも考慮した上で、医師とじっくりと相談することが大切です。以下に詳しく解説します。
豊胸シリコンの破損
外部からの強い衝撃や、長年の使用による劣化によって、豊胸シリコンの外側の膜が破損してしまうことがあります。中身の種類によっては、漏出してボリュームを失い、バストのハリがなくなったり、変形してしまうことがあります。
近年の豊胸シリコンは大きく変形するようなことはなく、ご自身で気づかないケースが少なくありません。ただ、そのまま放置すると炎症や感染症を引き起こすことがあるため、早期の対応が必要です。
カプセル拘縮
豊胸シリコンを挿入すると、私たちの体は異物に対する自然な反応として、その周囲にカプセルという被膜を作ります。しかし、この被膜が異常に収縮し、硬くなってしまうことがあります。これがカプセル拘縮と呼ばれる状態です。カプセル拘縮が起こると、胸はテニスボールのように硬くなったり、変形や痛みが生じます。
カプセル拘縮で締め付けられた影響で破損するケースも非常に多く見受けます。
リップリング
豊胸シリコンが乳房内でよれてしまう現象をリップリングと言います。挿入時によれてしまったり、豊胸後にスペース内で豊胸シリコンが動いたことで、バストにシワが寄ったり形がいびつになったりします。
程度がひどくなければ脂肪注入で改善することができますが、危険なのが、折れ曲がった豊胸シリコンの縁が角になって組織を圧迫している場合です。実際に、皮膚を吹き破りそうなくらい突起してたケースもありました。そういったケースでは、入れ替えが必要になります。
豊胸シリコン入れ替えの可能性を低くし、一生ものに近づける3つのポイント
豊胸シリコンは1回の豊胸手術で美しさを一生保てるものではありませんが、耐久性や機能性が向上していることもあり、昔より長期にわたり維持できるようになっています。ただし、手術内容や術後のケアによってその期間は変わってきます。
経験豊富なドクターを選ぶ
カプセル拘縮やリップリングには複数の要因が考えられますが、ひとつにドクターの知識や技術力があります。豊胸シリコンの挿入時に大量出血したり、その後の処置が適切でなかった場合に、カプセル拘縮は起こりやすいと考えらえています。また、リップリングも適切な挿入技術で行われなかった場合に起こりやすく、医師の手技でリスクの低減を図ることが可能です。
当院では3Dシミュレーションでサイズや仕上がりについてしっかりすり合わせ、出血を抑えるにも十分配慮して手術を行っています。
カウンセリングにおいて、豊胸シリコンの種類やサイズ、挿入方法について、ご自身のこだわりやトラブル予防の工夫について、医師によく確認しておきましょう。
術後に適切なマッサージを行う
マッサージについては医師で意見が分かれるところですが、私は豊胸後にマッサージしていただくようお伝えしています。
豊胸シリコンの周囲には包み込むように被膜が形成されます。マッサージせず動かさないままだと、被膜と豊胸シリコンが縮まって硬くなりやすいのです。そのため、当院のゲストには「被膜との間に余白を作る」ようにバストを軽く動かすイメージでマッサージすることをおすすめしています。
定期的な検診
豊胸シリコンの挿入後は、定期検診が非常に重要です。定期検診を受けることで、無症状ながら実は問題が発生している場合でも早期発見でき、炎症や痛みが生じる前に対処るうことが可能です。触診だけでなく画像検査することが重要で、日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会では豊胸シリコンの破損や変形がないか調べるため、2年に1回のMRIやエコーを使用した検査を推奨しています[4]。
当院の検診ではエコー検査を必ず行い、シリコンバッグの破損や漏れ、カプセル拘縮の有無などをしっかり確認します。お気軽にご相談ください。
豊胸シリコンの挿入後は必ず定期検診を受けましょう
豊胸シリコンは、理想のバストを実現する効果的な方法ですが、一生ものではありません。 安全性の高い素材とはいえ、経年劣化や破損、カプセル拘縮などのリスクがあり、発生した場合は交換が必要になります。 豊胸シリコンを長持ちさせるためには、経験豊富な医師による手術、術後の適切なケア、そして定期的な検診が不可欠です。
定期検診では、シリコンバッグの状態や周囲の組織の異常を早期発見することで、問題発生時のリスクを軽減できます。とても大切なことなので、当院でシリコンバッグ豊胸を受けられたゲストには無料で実施しています。
コラムのポイント
- 豊胸シリコンは一生入れ続けられるものではない
- トラブルが起こらなければ定期的な入れ替えは必須ではない
- 長持ちさせるためにドクター選びと豊胸後の定期検診が重要
よくある質問
-
シリコンバッグ豊胸は老後に不自然になったりしませんか?
乳腺の萎縮でバッグの形が目立ちやすくなります
長年挿入していることでのリスクがあるので、カプセル拘縮や破損なが生じた場合は、バストが不自然な形になってしまうことがあります。ただ、加齢に伴い乳腺が委縮するため、バストがボリュームダウンします。そうすると特にトラブルがなくても、豊胸シリコンの形が目立ちやすくなります。
脂肪を併用するハイブリッド豊胸は、豊胸シリコンだけでなく、自己組織の脂肪でもボリュームを担保しているので、老後の不自然さの緩和が期待できます。
出典
- 1 Paolo Montemurro, et al Implant Insertion Time and Incision Length in Breast Augmentation Surgery with the Keller Funnel: Results from a Comparative Study. Aesthetic Plast Surg. 2019 Aug;43(4):881-889.
- 2 G Patrick Maxwell, et al. Ten-year results from the Natrelle 410 anatomical form-stable silicone breast implant core study. Aesthet Surg J. 2015 Feb;35(2):145-55.
- 3 Scott L Spear, et al. Natrelle round silicone breast implants: Core Study results at 10 years. Plast Reconstr Surg. 2014 Jun;133(6):1354-1361.
- 4 「乳癌及び乳腺腫瘍術後の乳房再建を目的としたゲル充填人工乳房および皮膚拡張器に関する使用要件基準」日本2023年改訂第4版 日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会